流行性角結膜炎(はやり目)
はやり目は流行性角結膜炎(EKC)と呼ばれるもので、アデノウィルス8、9、19、27型の感染により起こる病気です。
症状は圧痛を伴う耳前リンパ節腫脹、急性濾胞性結膜炎症状で、重症のものは激しい充血、大量の眼脂、流涙、眼瞼腫脹瞼結膜に黄白色の偽膜(小児、老人)発 症後1〜2週で類円形の点状の上皮下混濁(点状表層角膜炎)を認めます。最近は、アデノチェックと呼ばれるモノクロナール抗体を利用した角結膜上皮細胞中 のアデノウィルス抗原検出キットがあり15分で、感染しているかどうかわかります。
毎年7月から8月に猛烈な勢いで流行します。感染経路としては、風邪のときの飛まつが直接目に入ることもありますが、一般的には、感染者が目を触った後、 何かに触れて、そこを別の方が、触って、その手で、目を触ることにより感染します。当然、病院やクリニックには、はやり目の患者さんが来院します。院内の 2次感染予防のための消毒は完璧に行なえますが、院外での接触による2次感染の可能性は完全には除去できません。また、感染者がプールに入ると、かなりの 大流行になります。学校や職場での感染にも気をつけたいと思います。また、家族の感染を防ぐために、タオルやハンカチは別にする、お風呂は最後にして、流 水でよく手を洗うことも必要です。
治療方法は消炎としてステロイド点眼、2次感染予防として抗菌剤点眼、点状表層角膜炎の治療としてステロイド点眼、角膜保護剤の点眼があります。偽膜がで きたときは除去します。アデノウィルスは熱や紫外線に弱いですが、室内など湿度の高いところは2週間以上生存します。ヨード剤、ホルマリン、アルコール、 オゾン水などでのふき取りも有効です。特にオゾン水は1ppm以上の濃度で1秒で殺菌できます。感染期間は、症状がでてから約2週間です。結膜炎治療後に も便中や尿中にアデノウィルスが排出されることがありますので保育園や幼稚園のプールの許可は慎重に決める必要があります。
糖尿病性網膜症
糖尿病は予備軍を含めて成人の6.3人に一人と言われています。
成人病としての糖尿病の3大合併症は、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経症があります。手足がシビレたり、腎障害を起こし最終的には透析になる人もか なりいらっしゃいます。日本での失明率のトップは糖尿病網膜症です。現在、300万人の糖尿病網膜症の患者さんがいらっしゃいます。
空腹時血糖が200mg/dlの場合、約10年で、網膜症が発症すると言われています。糖尿病がある場合、最低でも半年に1回の眼底検査が必要です。糖尿 病網膜症の初期、単純糖尿病網膜症は可逆性です。糖尿病のコントロールが良くなれば、改善されます。しかし、前増殖型あるいは増殖型糖尿病網膜症の場合 は、不可逆性です。いくら糖尿病のコントロールが良くなっても、悪くなる一方で、良くなりません。
皆さん、眼が見えていれば、網膜症でないと思っていらっしゃるかもしれませんが、視力が良いのは黄斑部という真中だけが出血していない、あるいは 血管が閉 塞していない場合もあります。周辺に新生血管や増殖組織があっても、見える場合もあります。しかし、いつ大出血を起してもおかしくない状況もあります。以 前は、治療として、アルゴンレーザーによる汎網膜光凝固を行い、新生血管が出現するのを押える程度にしか、治療できませんでしたが、現在は、硝子体手術に より、増殖組織や牽引性の網膜剥離まで、治療できるようになりました。未治療は別として、初期から眼科で治療や検診を受けていた場合は、失明することは稀 です。むしろ、糖尿病はあっても、見えているから、網膜症はないと思い、眼科受診していなかった方に失明のリスクが高いとお考えください。
初期は経過観察、出血や白斑が増えてきた場合は、蛍光眼底撮影を行います。新生血管あるいは無血管野がある場合は光凝固、黄斑浮腫の場合には循環改善剤投 与、光凝固、硝子体手術を行ないます。増殖変化が出てきた場合、硝子体出血の場合は直ちに硝子体手術を行ないます。
黄斑円孔
黄斑円孔はカメラのフィルムにあたる網膜の中心である黄斑部と呼ばれるところに孔が開いた状態です。原因は特発性の場合は、眼球内のゼラチン様の 硝子体と 呼ばれる部位が変性して液化し、容積が減ります。そのため網膜から後部硝子体膜が外れようとして、黄斑部を引張って孔が開くあるいは網膜上に黄斑上膜が張 り、そのひきつれにより孔が開く場合があります。
周辺の孔であれば、その周辺をレーザーで焼き固めれば良いのですが、黄斑部は焼けば焼いたところが見えなくなります。そのため、昔は放置しかあり ませんで した。しかし、硝子体手術が行なわれるようになり、硝子体を全て取り去り、網膜の牽引を除去し、網膜上の薄い膜も全て取り去り、網膜が緩んだ状態で、 SF6ガスを注入し、その膨張性を利用して、黄斑部の孔を閉じさせる方法が可能になりました。
現在では一度の手術で97%孔を閉鎖することができ、視力も改善し、50%近くは視力1.0以上にもなります。しかし、孔を完全にふさぎ、再開を 起させな いようにするため、ガスによる圧迫を長期間する必要があります。俯き姿勢で1週間近く下を向いた姿勢をとり、寝るときも俯き姿勢で寝ます。術後の体位が患 者さんにとっては大変ですが、術翌日、ご自身で孔が閉じているのを実感できます。下を向いてご自身の指をみるとそれまで、指が切れていたり、中央が細く、 内側に曲がっていたのが、まっすぐに見えて暗点がなくなっています。安心して、その後の療養ができます。
硝子体手術はどこでもできるというわけではありませんが、硝子体手術を多数例行なっている施設であれば、全く問題ない手術です。手術時間も30〜 40分程 度です。麻酔はテノン嚢下麻酔で痛くありません。体位の問題があるので入院が必要でガスが吸収されるのに2週間かかるため入院期間も2週間必要です。しか し、非常にきれいな手術で問題なく治ります。できるだけ早期に治療することをお勧めいたします。
加齢性黄斑変性症
欧米で失明原因の第1位である加齢性黄斑変性症(ARMD)は、日本でも、高齢化、食生活、生活習慣の欧米化に伴い、急速に増えつつあります。こ れまで、 治療法がないと言われてきたARMDも最近になり光線力学療法(PDT)が2004年5月より実施可能になりARMDも一部治療可能な疾患になる可能性が あります。
PDTとは光感受性物質をあらかじめ組織または血管内に取り込ませた上で、その光感受性物質に特定の感受性の高い波長のレーザー光を照射し、光感受性物質 を活性化させ組織を障害する、あるいは血管を閉塞する治療法である。眼科領域では、ベルテポルフィンを肘静脈より静脈注射し、それがARMDにおける脈絡 膜新生血管(CNV)内に集積し689nmの近赤外レーザーをCNVに照射することにより、正常網膜を傷つけずにCNVのみを退縮させる効果があると言わ れています。現時点では、治療後の再度新生血管が生じるため、何回も治療する必要があること、ベルテポルフィリンが高価であるため、保険収載になったから と言っても経済的な問題があります。それ以外の治療法として、抗血管新生薬として抗血管内皮細胞増殖因子抗体様の硝子体内注入や抗VEGF抗体断片の硝子 体内注入も臨床試験で効果があると言われています。最近の学会報告ではそのひとつであるネオバスチンが欧米ではPDTより第一選択になっているようです。 現在、日本で大腸癌の治療薬として治験中のため、輸入が難しくなっていますが、今後が注目されます。
それ以外にもステロイド薬からグルココルチコイド作用を除いて血管新生抑制作用のみを狙った薬、あるいはトリアムシノロンの硝子体内注入やテノン嚢下注射 も効果があると言われています。現時点では、いずれも一過性で継続的に効果があるかどうかについては、不明ですが、近い将来ARMDは治療可能な疾患にな ると思います。CNVの大きさ、状態などによりどの治療法を選択するか、手術療法も含めて今後大きく変わると思います。
緑内障
緑内障は、大別すると角膜と虹彩の間の隅角が狭い閉塞隅角緑内障と隅角が広い開放隅角緑内障に分けられます。
閉塞隅角緑内障は、突然の頭痛、眼痛で始まり、角膜が白くなり、充血します。時々、くも膜下出血と間違われることもあります。隅角が閉塞したた め、房水が 急激に多くなり眼圧が50mmHgのように猛烈に高くなり、緑内障の発作と言われる症状になります。炭酸脱水酵素阻害剤の点滴で一時的に眼圧を下げたあ と、レーザーで虹彩に孔をあけ、房水が前房に入りますと、隅角が開き眼圧が下がり、何事も無かったように治ります。ですから、このタイプは症状は強いです が、あまり心配は要りません。
もう一つの開放隅角緑内障の場合は25mmHg程度の眼圧が徐々に上がり、症状がありません。少しずつ進行して、視神経とそれに沿う網膜神経線維 束にダ メージを与え、視神経乳頭の陥凹と蒼白および網膜神経線維束の欠損をもたらし、その位置に一致した視野欠損が生じます。かなり進行しないと自覚しないため 厄介です。ですから、検診で見つかることが多いようです。さらに、悪いことに、眼圧が正常あるいは低い低眼圧緑内障と呼ばれるものもあります。この場合、 視野検査で判断するしかありません。
開放隅角緑内障は、点眼でコントロールしますが、失った視野を回復することはできないため、眼圧を20mmHg以下にコントロールして現状維持が 治療の原 則となります。点眼でコントロールできないときは緑内障の手術が必要になります。緑内障の早期発見のため、40歳以上の方は1年に1回は検診あるいは眼科 で検査をお受けください。
糖尿病網膜症の末期などで、隅角に酸素が足らないため、新生血管が生じ、出血を繰り返し、眼圧があがる新生血管緑内障というものがあります。非常 に難治性 で、ろ過手術で眼圧を下げますが、新生血管そのものが無くなるわけではないので、汎網膜光凝固で隅角に酸素が流れやすくします。予後は非常に悪く糖尿病の 失明のほとんどは新生血管緑内障です。これに対して新生血管阻害薬のネオバスチンが有効であるとの報告が学会に出ています。治療薬として有望かもしれませ ん。
黄斑浮腫
黄斑浮腫は、網膜の中心であり、視力に関係する黄斑部と呼ばれる領域に血管から水分が漏出し黄斑網膜の膨化、嚢胞形成、網膜剥離等を伴う変化です。原因疾患としては糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症などの血流障害を引き起こす疾患が考えられます。
検査方法は腕からフルオレッセンNaを静脈注射しながら蛍光眼底写真で、網膜からの漏れ具合を調べたり、眼底を詳細に検討して網膜が厚いかどうか を調べま すが、最近は光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)によって網膜の断層像や網膜と硝子体の構造、関係が視覚的にはっきり見る事ができるようになりました。そのため、黄斑浮腫 の診断が容易になりました。治療は基本的には原因疾患の治療が必要です。しかし、黄斑浮腫の治療としては対症療法になりますが、浮腫を早く引かせるため に、さまざまな治療法が行なわれています。
内服として循環改善剤、血管拡張剤、プロスタグランディン阻害剤、点眼として炭酸脱水酵素阻害剤、非ステロイド性消炎剤、点滴としてプロスタグラ ンディン 阻害剤、血小板凝集阻害剤、血流改善のため近赤外線レーザーによる星状神経節ブロック、100%2気圧の高圧酸素療法、汎網膜光凝固術、黄斑部の格子状光 凝固などがあります。これらは、いずれも黄斑部の血流の改善を促すものです。また、硝子体手術によって硝子体の直接的牽引の除去、硝子体中の炎症物質の除 去、内境界膜の除去、硝子体への直接的薬物の投与(トリアムシノロン、ネオバスチン)、網膜への直接的酸素供給により黄斑浮腫の軽減および視力上昇が期待 できるようになりました。
黄斑浮腫は、これまで治療の効果が期待しにくく、自然経過とあまり変化がないといわれてきましたが、硝子体手術を受けた場合など、明らかに、浮腫消失期間が短くなってきています。黄斑浮腫の治療はここ数年の進歩で劇的に変わってきました。
網膜剥離
女優の樹木希林さんが、網膜剥離で失明したという報道がされました。実際の報道は、見ていませんので、迂闊な事は言えませんが、網膜剥離は98% 治りま す。報道では医者に手術を勧められたが、体力に自信がないため、100%治るわけではないので、手術をせずに放置し2ヵ月後に失明したとのことでした。
現在の医学で、網膜剥離で失明とは考えられないことです。物を見る中心部である黄斑部が剥離していても1週間以内であれば、視力1.0以上になる ことも稀 ではないのです。網膜剥離の原因は、特発性と続発性によって異なります。特発性はこれがほぼ90%以上を占めますが、網膜の前にある後部硝子体が年齢と共 に変性を起こし、液化して容積が減少し、網膜から分離します。これを後部硝子体剥離と言います。これは、生理的な現象で誰でもおこります。その時、飛蚊症 と呼ばれる現象が起ります。後部硝子体剥離が起る時に、網膜と後部硝子体膜の接着が強いところあるいは元々、変性があり弱いところがあると、硝子体剥離が 起るときに、網膜を強く引張って穴が開く事があります。これが網膜裂孔です。その孔から、液化した硝子体が網膜下にはいると網膜剥離をおこします。外傷で 孔が開いても同じようなことがおこります。
続発性は糖尿病や網膜静脈閉塞症などの原因疾患があり、硝子体の牽引により網膜が剥がれる場合があります。この場合は孔がありません。続発性のほ うは原因 疾患の治療も必要で、特発性より治り難いと言われています。それでも、網膜剥離はほぼ治ります。特発性であれば、時間が経過していても、剥離を治す事は可 能です。しかし、良い視力を得ようとすれば、緊急手術ですぐに治すべきです。バックリング手術でも硝子体手術でも治癒率は同じです。安静度は、硝子体手術 ができるようになってから、術翌日から歩き回ることも可能です。局所麻酔で手術時間は30分〜40分で終了します。おかしいと思ったら、すぐに眼科を受診 しましょう。網膜剥離は必ず治ります。
黄斑上膜
基本的にはほとんどの病院、クリニックで硝子体手術は入院で行なっています。その理由として、硝子体手術の合併症の問題です。黄斑上膜を剥ぐ手術 であれ ば、エキスパートの硝子体術者であれば、日帰り手術で30分程度で手術は終了します。当クリニックでも手術ができます。痛みも全く無く。術翌日かなり見え 方が回復しているはずです。
しかし、硝子体手術は応用問題であり、硝子体を完全に郭清しようとすると、10%程度の確率で、網膜に穴があく事があります。そうすると、硝子体 の中にガ スを注入し、裂孔をレーザーで焼き固めるという方法が取られます。ガスが軽いため、うつ伏せに寝て、ガスの圧迫で孔を閉じるということになります。自宅で そのようなきちんとした姿勢を取る事が、困難なため、入院をしていただくということがあります。入院ベッドに余裕があれば、日帰り手術の予定で、問題がお こった時に、入院に切り替えると言う手法がとれますが、満床であれば、急な入院は無理です。そのために、あらかじめ、予定入院での手術という方法が取られ ます。現時点では、網膜裂孔や硝子体手術の合併症の可能性は非常に少なく日帰り手術のよい適応です。
今後は日帰り硝子体手術は必ず増えると思います。症例の難易度の判定、術者のテクニック、硝子体手術器具の発達により、硝子体手術そのものの、危 険性はほ とんどなくなりました。白内障手術が現時点で、ほぼ全例日帰り手術になったように、硝子体手術も、日帰りで十分だとおもいます。後は、問題が発生したとき のバックアップ体制をどうするか、入院設備のない施設での硝子体手術の場合は、入院しなくても可能な体位のとれるタンポナーデ物質を準備しておいたり、場 合によっては、後方病院を用意してある体制が必要になります。逆にいえば、そこまで、できる施設であれば、日帰り硝子体手術が可能と言うことになります。
アレルギー性結膜炎
アレルギー性結膜炎は日本全国で1000万人を超える患者がいると言われ、今や、花粉症の時期の眼科外来は年中行事のように人であふれかえるよう です。自 覚症状は痒み、異物感、涙が三大症状です。マスト細胞から遊離されたヒスタミンなどの化学物質が痒みを引き起こし、異物感は結膜乳頭が瞬きの時に角膜に触 れるために生じると考えられています。それ以外にも角膜障害が原因になることもあります。流涙は三叉神経の刺激によると思われます。
診断は臨床症状でほぼわかりますが、抗原特異的IgE抗体測定のRAST、MAST等のほかに、末梢血遊離ヒスタミン試験が新たな検査としてでてきています。
治療法は薬物療法が点眼が主流で、抗アレルギー薬による予防的効果とステロイド薬による即効的効果と強い抗炎症作用が有効です。しかし、ステロイ ド薬は眼 圧上昇などの副作用があり、今後はサイクロスポリンなどの免疫抑制剤が主流になるかもしれません。実際春季カタルの治療として実際に使われており、劇的な 効果をしめしています。それ以外に非ステロイド系消炎点眼薬の併用も再発予防の効果があると言われています。最近の点眼は1日1回や2回で十分な効果があ る薬物も開発されており、どうしても点眼だけで効果が少ない場合、春季カタルなどの巨大乳頭を併発する場合はステロイド点眼では充分な効果が得られず、病 変部の結膜切除が有効なことがあります。
この場合、自己結膜移植が併用されます。最近、多く用いられている方法が、トリアムシノロンの瞼板下注射です。ステロイドレスポンダー(ステロイ ドに過敏 に反応して眼圧が上昇する)でも眼圧が上昇せず、長期的な効果も期待できます。さらに再増殖を防ぐためにサイクロスポリンの点眼も行ないます。
☆動画で詳しく解説しています。
網膜色素変性症
遺伝性疾患である網膜色素変性症、末期の緑内障、増殖性糖尿病網膜症あるいは増殖硝子体網膜症で何度も手術を受けられ、視力がほとんど出ない人、 医学の進 歩でも、救うことのできないことがあります。その場合、多くの眼科医は、治療の方法がありません。の一言で、突き放してしまうことが未だにあるようです。 医者から見離された患者さんはどうすればよいのでしょうか。この場合、2つのことを考える必要があります。一つは、中途失明を起こさないように、できるだ け残存視覚機能を残す努力をする事、さらに、現在ある視覚機能をいかに有効に使うかということ。もう一つは、見えているうちに、いろいろ準備をしておくこ と。この中には、眼科医としてできることがたくさんあります。
網膜色素変性症の場合、できることとしては、循環改善剤の内服、プロスタグランディン製剤の点滴、星状神経ブロック、高圧酸素療法により、血流の 改善をは かり、中心視力の維持をはかる。遮光眼鏡(短波長可視光線をカットする黄色眼鏡)により、網膜機能に悪影響を与える波長を取り除く、公的補助を受け取るた めの諸手続きの説明(難病の申請、身体障害者手帳の給付)、拡大読書器、拡大鏡の訓練(ある程度見えている状況で覚えた方がかなりラクです)、視野が非常 に狭く、視力が悪い場合には、拡大読書器でテレビ画面上に映せば、預金通帳を見ることも、手紙を書くことも可能です。これらの機器は手続きを踏めば無償で 提供されます。実際に、現時点でどの機種が使いやすいかどうかも、お役所ではわからないことです。
また、将来に備えて、点字を勉強したり、白杖を体験したり、歩行訓練を受けてみたり、どこで、どのような行政サービスが受けれるかの情報も必要です。同じような症状の方との交流も大切です。これらを含めてロービジョン外来として行なっている施設が数少ないのが現状です
ドライアイ
最近ではドライアイの大半は、ムチンレベルの低下が関与していると言われています。ムチンレベルの低下は杯細胞密度低下と相関しており、ドライア イが進行 すると結膜細胞の扁平上皮化が進み、それに伴い、杯細胞密度が減少します。ですから、ムチンの分泌を促す物質あるいはムチンと同等の働きをする物質の点眼 剤が研究されていますが、現時点では、使用できるものはありません。ですから現在は対症療法となり、涙のかわりになるような粘弾性物質(ヒアルロン酸)の 点眼、しかも防腐剤のないものを選ぶ必要があります。それでも乾燥がなくならない場合は、シリコン製の涙点プラグを上下涙点のいずれかに挿入します。涙嚢 に流れる涙の量が減るため、結膜内の涙液量が増えます。これで、大抵は良くなります。ソフトコンタクトレンズを使用すると水分を吸着してしまうため、ドラ イアイの人の場合、少ない涙液がコンタクトレンズに吸着されるため、乾燥がひどくなります。ドライアイの本体は涙液量の減少と、ムチンレベルの低下が考え られます。涙点プラグをしても、軽快しない場合には、コンタクトレンズを中止にするしかありません。眼鏡が可能であれば、眼鏡に変更すれば、かなりドライ アイは軽減します。
眼鏡が不可能な場合には、屈折矯正手術も一つの選択肢です。一般的にレーシックはドライアイがひどくなると言われますが、実際には、涙液のターン オーバー が早くなることと、コンタクトを使用しないためドライアイが軽快することが多いようです。もちろん、涙が全くでない場合はダメですが、PRKも含めて検討 する価値はあります。
スーパーライザーのご紹介
『スーパーライザー』は、光の中で最も深達性の高い波長帯の近赤外線(0.6μm〜1.6μm)を高出力でスポット状に照射することを可能にした 初めての 光線治療器です。近赤外線を投射することで血流を増加させ、痛みを和らげる・皮膚などの組織の活性を助けるなど効果は多くあります。その効果はペインクリ ニックをはじめ各科で認められ、いま医療現場で大きな注目を集めています。
皮膚科・外科領域にて多くの効果が得られることは言うまでもありませんが、過去数年の臨床経験により眼科にても効果が得られることが立証され、セントラルアイクリニックに導入致しました。
眼底血流障害の改善の他に、眼精疲労や軽い近視に対しても効果が得られます。又色々な原因で起こりうる肩こり・筋肉痛の緩和やヘルペスにも効果が広範囲に得られています。
高齢化に伴い循環機能が低下する眼疾患を治療するために、この近赤外線を用い星状神経節(頸部左右にあります)をブロックします。以前より外科的な処置でこのブロックを行っていましたが、この器械の開発で安全に効果が得られるようになりました。
この星状神経節ブロックを行うことで、網膜・脈絡膜の血流を増加させ視機能を回復させます。
他の治療が難しい緑内障・黄斑変性症などの眼底疾患に効果があります。その方の症状の程度により効果の限度はありますが、副作用のない簡単な治療法です。
1回の治療は10分位ですが、症状によっては週に2〜3回の持続治療が必要な場合もあります。
視力の回復も個人差がありますが、少しずつ回復されています。
網膜疾患や緑内障による視機能低下でお困りの方は、この治療をお受けになることをお勧めいたします。
セントラルアイクリニックではこの治療の費用は戴いておりません。診察料と検査料のみを戴いていております。
今まで色々な治療をお受けになったにもかかわらず視力の回復が難しい方が、この治療をお受けになり多くの方々が少しでも視力の回復されることを望みます。